我家のみんなが大好きな林 明子さんの絵本。
「はじめてのおつかい」「きょうはなんのひ」「こんとあき」を読んだときに衝撃を受けましたが、この作品は、別のジャンルではありますが、素晴らしい出来栄えの作品だと思います。
林さんの別の顔のファンタジー作品ですが、正直脱帽。
ストーリー、絵、構成とも満点、非の打ちどころが全くありません。
物語は、主人公の女の子 よしみちゃんのおにいちゃんが、得意になって絵の具を使って絵を描いているシーンから始まります。
よしみちゃんは、
「わたしも絵の具でかきたい」と訴え、おにいちゃんも根負けして絵の具箱を貸してくれるのです。
この兄妹の関係って、とても良いですよね。
絵の具を貸すって、かなり勇気がいるし、大切にしているだけに、妹を想う優しさにまず感激しました。
それから、よしみちゃんの絵の具を使ったお絵かきが始まるのですが、段々と絵の具が減っていきます。
リスとかカラスとかが絵の具を持っていってしまうのです。
ヘビが絵の具をくわえているのに気付いて、追いかけていくと、そこでは動物達がおにいちゃんの絵の具を使って絵を描いているのです。
よしみが出ていくと、みんな一度は逃げ出すのですが、またみんな戻ってきてお絵かき大会が始まるのです。
クマ、キツネ、サル、ウサギ、テン?、リス、ネズミ、カラス、ヘビ、トカゲ、コトリ、シャクトリ虫、アリ等、見るだけでほのぼのとしてしまいます。
それにしても、カラスの描く都会の絵が上手すぎて笑えてしまいます。
キツネなんかも、尻尾で絵を描いていて、この発想が〇。
おにいちゃんの呼ぶ声で、動物達は自分の作品を持って逃げてしまいます。
最後はおにいちゃんが、
「うわあ、すごい!
ほんものの まほうの えのぐだ」
と言って倒れるシーンで終わるのですが、その絵は裏表紙にありました。
その絵は、確かに一緒に絵を描いた動物達が描かれていて、賑やかこの上ないもの。
隣にあるのは、シャクトリ虫の絵。
また、キャンバスの端が欠けているのですが、これは、物語の最初でリスが切り取った後と、色んなところに細工が施されています。
文章のところの枠組みには、シャクトリ虫の動く姿が描かれていたり、森の木には表情があったりと、他にも仕掛けが盛りだくさん。
きっと何度読み返しても新しい発見があるし、読み返したくなる絵本だと思います。
ファンタジー作品の最高峰の1つと言っても過言ではないと言える作品として、絵の具を使いだす年頃のお子さんの読み聞かせのオススメです。