比較的低年齢向けの絵本にも関わらず「孤独」がテーマという斬新さ。
マンガのようなコマ割りのページがあったり、おおかみに噴き出しで台詞を言わせたり、しかもその台詞がたった一言「け」だったり…
あまりの異色さに驚きながらページをめくり、そして最後のページでは必ずほろりと涙が出てしまいます。
今まで読んだ中で一番心に残る、一番大好きな絵本です。
孤独な長い旅の末に、街にもマーケットにも公園にも家庭の団欒の中にも墓地にさえも自分の居場所を見つけることができないおおかみ君。
いっそ他の動物になれたら…なんて考えも浮かびますが、やっぱり彼は生まれついてのおおかみなので他に迎合することは出来ず、孤独に身を置くしかできません。
折々、吐き捨てるように呟く「け」は人恋しさ、やりきれなさ、嘆きが入り混じった誰にも届くことのない心の叫びなのです。
大人なら誰しもおおかみの孤独に共鳴してしまうのではないでしょうか。
誰の心の中にもおおかみがいるからこそ、この絵本は30年以上も多くの人に愛され、読み継がれているのだと思います。
2歳の息子にはまだこの本の深いテーマはピンとこないようで、楽しそうに「け」というセリフをマネしています。
でも、このちょっとほろ苦くも温かい、ささきまきさんワールドは息子の心に根付いていて、彼がもう少し大人になって困難と向き合った時にふと思い出してくれるのではないかと思います。