満天の星空の澄み切った空気の中、旅立ちを迎えるいちょうの実千粒。
その千粒の命にそれぞれの物語があり、気持ちがあることを予想だにしなかった私。
希望・不安を抱えながらもいつかは旅立ちの日を迎えるだろう思春期のわが子の成長と重ね合わせて読みました。
宮沢健治の文章は、声に出して読むといっそう味わい深く、いちょうの子どもたちの気持ちが心に響いてきます。
色見を抑えた絵からは、いちょうの子どもたちのかわいらしとさが伝わり、どの子にもいとおしさが感じられました。
そして表紙と裏表紙では違う見返しが。そんなことからも細部まで丁寧に作られた一冊であることが伝わってきます。
秋の実り、移ろいゆく季節の中にある生命のきらめきが感じられる作品です。