白い月の微笑みに、ダ・ヴィンチの描いた『モナリザ』を感じます。中性的で神秘的でなにかを語りかけてくるような永遠の微笑み。
一粒の小さな卵は、月明かりに見守られてこの世に誕生します。それは小さな小さな虫ですが、大きな大きな大切な命です。藍色の闇に浮かぶ白い月は、生命の誕生という宇宙の神秘を物語っているようです。私はこのはじまりの絵が大好きです。
一変して、子どもの顔ほどもある金色の太陽が卵を孵化させます。昇っては沈む太陽は、暦の巡り、成長を象徴しているようです。
子どもが初めてお乳以外の食べ物を口にするのは、フルーツですよね。それからキャンデーやキャラメルやチョコレートの洗礼を受け、時には大人顔負けの嗜好品を喜んだり、とにかく大人が食べている物はなんでも食べてみたい、好奇心と食欲こそが子どもの本分であり、多くの大人が望むことです。
「うわーー食べ過ぎだー」
子どもも私も嬉しくなってしまいます。
だけどお腹が痛くなってしまう。この情けない気持ちはどうでしょう。しょんぼりとしてしまいます。子どもの小さな胸は、幼い後悔でいっぱいになります。
でも、大丈夫!体は、自分に一番相応しいものを誰に教えられることなく導き出します。それは体(生命)そのものが自然であるからではないでしょうか。自分に必要なものがなにか知ることが出来た青虫は、どんどん大きくなっていきます。これはまさに子どもの成長そのものという気がします。
最後の蝶のペイジを開くと、子どもたちは色を数えはじめます。
「これはサラミの色だよ。」
「これはキャンデーだ〜」
「ピクルスもあるよ。」
そうしてしょんぼりして感じた小さな後悔が、ひとつも無駄なことじゃなかったことを知り、ホッと安堵するのではないでしょうか。
作者の温かいまなざしと、命への賛歌を感じる一冊です。