1934年(昭和9年)から作家活動を始めたルドウィッヒ・ベーメルマンスの処女作です(童話)。【日本では1953(昭和28)年初版】
彼はオーストリア西部に位置するチロル(アルプス山脈の東部)の出身です。
お話の舞台が、チロル州の北部にある州都インスブルックから登山鉄道で上って行く山です。
原題は『Hannsi(ハンシ)』主人公の少年の名前です。
インスブルックに住むハンシは、クリスマス休暇に登山鉄道に乗って山の監視人をしているおじさんの家へ一人で行き、おじさん一家とクリスマスを過ごすことになります。
初めての一人旅の心細さや、山を登って行く車窓からの風景描写が、見事です。
スイスの作家ヨハンナ・シュピリ『アルプスの少女(ハイジ)』の少年版を読んでいるようでした。
おじさんの家に着いて、初めて体験する事にハンシがドキドキワクワクしている様子が伝わってきます。
従姉妹のリーザールと二人で、飼い犬ワルドルにスキーをはかせ滑らせるシーンには笑ってしまいました。
監視人のおじさんが、森の鹿にえさ(干草)やりをするのについて行った様子も読んでいて興味を持ちました。
そして、なんといってもクリスマス・イブの夜。
可愛らしい三人の王(博士)の各戸の訪問。
夜中の礼拝のため教会に出かける人々が提げているカンテラの光が、列になり光っている様子。
山の教会の窓が谷間の青い夜の中に、ぽうっと光る様子。
どれもこれも、私にとって経験のないことばかりが、美しい文章でつづられています。
クリスマスの近づく季節に、お子さんと一緒に何日かかけてゆっくり読んで見てはいかがでしょうか。
そうそう、雪の降らない地方の方にとっても、雪山でのクリスマスを間接体験できる素敵な一冊になると思います。