スタンダードとは、飽きられてしまうものなのでしょうか。
いやスタンダードって、新しい出会いがあれば何度でもリフレッシュする作品だとこの本から気づかされます。
誰でも知っている「手ぶくろを買いに」。この作品の作者新美南吉さんは1943年に30歳の若さで逝去するまでの短い一生の中で「ごんぎつね」「おじいさんのランプ」など民話的な美しい作品をつむぎだしました。
この作品に黒井健さんが絵をつけて世に出たのが88年、今では130刷(在庫がなくなると新たに129回追加で製本されてきた)を迎え、この本の人気を静かに物語ってます。
黒井健さんの描く動物達は、どれも暖かさが心の中に伝わってくるほどふわふわとした毛を身にまとっています。いえ、風景の中の積もった雪でさえ、その下は暖かいのだろうなと思わせるぐらい体温を持った絵です。
お話の、やさしさに、こうした体温を感じさせる絵が、一緒になって読む私たちの心を暖めてくれるのです。まさに絵本の魅力を存分に楽しむことができる一冊です。