芥川龍之介が「桃太郎」を分析考察すると、こんなお話に変貌するのでしょうか。
桃太郎がこの世に生まれてきた大きな神秘性に、否応なしに呑み込まれてしまいました。
桃太郎が、鬼の世界の平穏を乱して争い事の火ダネを作ったとする解釈に、創作当時の日本社会に対する彼独自のニヒリズムが感じられました。
桃太郎ば本当に英雄だったのでしょうか。
仲のよくない犬猿雉を僅かな報償で束ね、自らの征服欲を実現させた存在と考えると、現実感が増してきます。
桃太郎が帰還した後日譚には、考えさせられるものが詰まっています。
絵本となる時に、芥川は寺門孝之さんのような絵を想定していなかったとは思うのですが、寺門さんの絵で、芥川の世界が一段とドロドロしたものになったように思えます。