実際の体験を基にした体験記としての重みのあるお話です。
寮美千子さんが、絵本作成のために文章化されたことにも、この絵本の思いを感じました。
田中さんが小学校3年生の時に、太平洋戦争が始まったといいます。
「少国民」として目にした戦争は、恐ろしい現実と疑問だらけの現実の中で、田中さんに大きな影響を与えたことでしょう。
極力感情を抑えた記憶の描写だけに、戦争というものに踊らされていた国民の心理の、矛盾と葛藤を汲み取りました。
あの戦時下において、足の悪い子に合せてみんな一緒にゴールした徒競走のエピソードが印象的です。
思いやりの心を伝え、自らは戦地で亡くなった長谷川先生の姿が、この絵本を引き締めています。
こんなことがあったから、田中さんは弁護士への道を歩んだのですね。
小学高学年から中学生にお薦めの絵本です。
戦争を知らない大人たちにも、体感してほしい絵本です。