1930年代に作られた、アメリカの有名な作家:ドクター・スースの絵本。昔話風の展開と思いきや、意外な方向に向かって突き進む奇想天外な物語。
田舎の庶民の少年が王様の前で帽子を取らない、無礼だ!ということで犯罪者扱いされ、無理やり帽子を取らせられるが、帽子は何度とってもまた同じところにある。帽子が次々出てくる不気味さに、国一番の帽子職人も、賢者も、弓の名人も、首切り役人もまったくお手上げ。生意気な王族の子どもが、一番悪知恵を働かせて、田舎者の少年を処刑しようとする。なんでも自分の思い通りにいかないとすぐに処刑しようとするのは、王様譲りかしらん?首切り役人が一番人間味があってまともだった。
決まりに従わなければ厳罰に処す、ということがなんとも無意味で空しいものに感じられる。強烈な社会に対する批判や風刺がスパイスのように効いている。最終的には不思議なことが起きてめでたしめでたしだが、その間はハラハラしっぱなしで、ずんずん物語に引き込まれていく。
文章が多い絵本だが、小学生低学年の簡単な漢字がわかれば大丈夫。ルビもふってある親切設計。