ある朝目覚めるとグレゴリー・サンプソンは大きな虫になっていた。
カフカの「変身」の重さはないにしても、考えさせられる絵本です。
虫になったことを気づかない(認めない?)グレゴリーの家族。
自分が虫であることを気づくのは親友のマイケル一人です。
学校でも、自分が虫になってしまったことを訴えても、誰も認めてくれません。それどころか相手にされなかったり、怒られたり。
この本は絵本だから、自分たちは虫になったグレゴリーを目にしていますが、実は虫に見えていないのかもしれない。グレゴリーは虫ではないかも知れない。
これはとても含みのある話です。
人の目にはわからない自分を認めてもらうこと。これは大変な事です。
家に帰って、やっと家族は自分が虫であることを認めてくれました。
ここで、僕は思うのです。
やっぱり、家族の目にはグレゴリーは人間にしか見えていないのではないかな。
子どもの心を認めたということではないかな。
この絵本を人間のアイデンティティの認知と読むと、最後にグレゴリーが人間に戻ることで話はややこしくなってしまいます。
作者が何を言いたかったのか、読者に任されてしまうからです。
絵も文章も軽い絵本ですが、息子には難しかったようです。
私も悩んでしまいました。