美智子様が以前この本のことをスピーチなさっていたのを聞いていて、とても気になっていた本なのですが、やっと読むことができました。
四っつの短いお話の中で、私が最も心に残ったのは、やはり表題にもなっている「でんでんむしのかなし」のお話です。
ある日一匹のでんでんむしが、自分の背中の殻の中にたくさんの悲しみがいっぱいつまっていることに気が付いたというのです。この一節に、出だしから心をむんずと掴まれて、お話の世界に引き込まれてしまいました。
自分の悲しみに気が付いたでんでんむしは、友達の元を訪ねて行って、自分がいかに不幸せで、可哀想な存在かと嘆き悲しんで見せるのですが、相手の反応は、自分が望んだものではありませんでした。
「あなたばかりではありません。わたしのせなかにもかなしみはいっぱいです。」
この言葉を聞いて、また、違う友達の所へ次々と訪ねていくのですが、どの友達の答えも同じでした。
見た目では、わからないけれど、人は、それぞれ悲しみを背負って生きているのです。決して、自分だけが悲劇のヒロインではないのです。そのことに気付いたときに、また一つ賢く、強くなっているのです。