なんと美しい絵本でしょう。
まず、一面水色の表紙に魅きつけられます。イーヴォ・ロザーティさん文章もいい(翻訳は田中圭子さん)。ガブリエル・パチェコさんの絵も素晴らしい。暗い色調が水色を引き立たせます。
そして、何よりも「ひらいたままのじゃぐちからうまれた」「水おとこ」というキャラクターが秀逸です。
さすがに第15回絵本賞の読者賞を受賞しただけのことはある読み応え十分の絵本です。
「水おとこ」は「人とはちがっていることで」たくさんの誤解をうけます。だから、街の人びとから追いかけまわされたり、どなりつけられたりします。「水おとこ」はちっとも悪くはないのに。
そんな「水おとこ」ですが、時が少しずつ流れて人びとは少しずつ心を開くようになってきます。素直に「水おとこ」を受け入れたのが子どもたちだというのが素敵です。
でも、「水おとこ」がほんとうにいるところは、ここではありません。川や海や雨の中。だから、「水おとこ」は前に進みます。「水おとこ」はどうなるのでしょう。
少しだけヒントを書けば、最後のページは、一面の水色。
なんとなく村上春樹さんの翻訳で読みたい気分になる絵本です。