『おはなしのろうそく1』(東京子ども図書館編)に収録されている、おなじみのお話です。
素話が良いのか、絵本が良いのかと比較されることもあるかもしれませんが、再話した人も訳した人も違うということもあり、どちらも楽しむのが良いと思います。
この絵本のおもしろいところは、左側のページには、一面に精細で色あざやかな、どこかユーモラスな絵が描かれており、テキストが書かれている右ページの右下には影絵のような絵が添えられています。この影絵のおかげで、残酷だったり、怖ろしかったりする場面が、読者の想像に委ねられています。
少し納得がいかないのが、モリーが危険を冒して、王さまとの約束を果たしたにもかかわらず、その褒美である結婚する王子さまが、なんとなくさえないのです。王子さまといえば、かっこいいものと相場が決まっているのに、なぜ「かしこいモリー」は二人の姉たちとともにさえない王子さまと結婚したのでしょう。
大男の家から物を盗んでくるときに使った「かしこさ」よりも、王子さまの見た目なんかより、姉妹そろって、しあわせに生活することを選択したことが、実は「かしこいモリー」とよばれる由縁なのかもしれませんね。