息子は、この絵本の表紙を見た途端に、「お母さん、これって、横浜市電じゃない?
久良岐公園にあるのと同じじゃん。」と。
話は、チンチン電車(市電)が最後に走る日から始まります。運転士はでんきちおじさん。
でんきちとは、電車きちがいという意味のあだ名。市電は最後だからと装飾され花電車として
走ります。おじさんは、遠い昔、自分が小さかった頃に見た花電車のことを思い出します。
そして、最後の日が終わると、市電達は色々な人たちに引き取られて行き、海の底へ放棄
されるもの、ウチの近所の公園のように展示されるもの、歯医者になったり、レストランに
なったり、図書館になったり...
ひとつひとつを訪ねたおじさんは、図書館になって子ども達を沢山乗せている市電に喜び、
空を走らせます。すると色々なところに散らばった市電たちが集まり...
という最後はファンタジーになる話でした。
今年亡くなってしまった作者:長崎源之助さんの郷土愛(横浜)というか、市電を愛して
いた気持ちがとても伝わってきました。
私は長崎さんの子供を主人公とした話は、いつも会話が活き活きとしていて大好きで、
しかも、これまた大好きな村上勉さんの絵なので、この絵本の素敵なコラボレーションが
夢のようでした。
息子は、市電が空を飛んだり海中を走ったりして終わる結末に、「ぼく、この続きが
知りたいんだけれど!」と目を輝かしていました。
古いものが時代共に刷新されることはよくあることで、絵本にも沢山なっていると思います。
この絵本は、その中の1冊ですが、終わり方が暗くないのが救いです。
でも、絵本の中の何気なく書かれている一文、
「ばかな はなしだ。こうがいを だす じどうしゃのために しでんが なくなるなんて。」
にドキっとします。横浜でも、市電と共存という手もあったのかもしれないなと。
私達親子には素晴らしい本なのですが、のりものストーリーなので万人受けはしないと思い
3つ☆にしましたが、是非是非、読んでみてください!(偕成社 のりものストーリー7)