戦争は、人の夢や希望までも失わせてしまう。
戦争は、絵を描くことが好きで好きで、絵を愛してやまなかった画学生の命も奪ってしまった。
しかし、彼らの絵には夢と希望がつまっていた。
そんな絵を求めて、作者は画学生の遺族を訪ねる旅に出る。
そうやって集めた絵を展示するために作られた美術館が「無言館」だ。
余計なものを省き、和紙に水彩で描かれた絵の一枚一枚が、文章と一体となって読み手に問いかける。
全体的に色調は暗いが、最後のページは希望に満ち溢れ、いつまでも、こんなのどかな風景であってほしいと願ってしまう。
作者はあとがきで、読者に約束してもらいたいことをいくつか記している。
「二度と戦争を起こさないこと」
「自分の生命(いのち)、他者(ひと)の生命、生命あるすべてのものを大切にして生きてゆくこと」
そうしなければ、この絵本の最後のページは、暗いものになってしまうだろう。
作者との約束を守るためにも、「無言館」に出かけてみたいと思う。
小学高学年から中学生に読んで欲しい一冊です。