戦後77年も経ち、子供たちに太平洋戦争のことを伝えるのは、どんどん難しくなっている。
何しろ、おじいちゃんおばあちゃん世代も若い頃は「戦争を知らない子供たち」と歌っていた人たちになっているのだから。
もちろん、子供向けの絵本にも戦争の悲惨さや悲しみを描いたものもあるし、
「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫さんには当時の戦争の頃を描いた作品も多いから、
そういう作品で伝えることはできる。
そして、子供たちが小学生の高学年になったら、読ませてあげたいのが、
児童文学者今江祥智(よしとも)さんの『ぼんぼん』だ。
今江さんは1932年に大阪に生まれた。(2015年逝去)
なので、1928年生まれの手塚治虫さんと近い世代ということもあって、
『ぼんぼん』と手塚さんの戦争漫画は似た匂いを持っている。
読み比べてみるのも面白い。
『ぼんぼん』は、小学3年生から小学6年生までの洋という、大阪市内で暮らす少年の物語である。
昭和16年の春から昭和20年8月の終戦までを描いている。(エピローグではその2年後の姿も書かれている)
物語の初めの頃は戦時中といっても、すごく平和な感じすらしているが、それがどんどんなくなっていく。
主人公の洋には洋二郎という4つ違いの兄がいるが、洋楽の好きな兄もどんどん軍国少年に変わっていく。
そして、昭和20年3月13日、大阪は大空襲にあう。洋たちの街も火の海に巻き込まれていく。
空襲の中逃げ惑う人々、炎に焼け死んでいく人々、焼き跡の中で洋が見た米軍墜落機への過酷な仕打ち。
普通であったことが、いつの間にか狂気になっていく怖さが、この作品にはある。
物語を読むことで、自身が経験しなかったものを味わう。
子供たちに読み継がせていきたいし、
「戦争を知らない子供たち」と歌ったおじいちゃんおばあちゃんにも
読んでもらいたい一冊だ。