黒い木炭の濃淡だけで、透明感と空気感が凄いよく描かれています。そこに作者のお気に入りかと思える、赤と黄(混ざった橙)だけが色鮮やかに浮かび上がって、眺めるだけでも綺麗な作品です。
黒い濃淡に異次元空間に迷い込んでしまったような雰囲気がよく伝わります。「もりのなかへ」を連想しそうな、動物たちとの楽しい触れ合いや、見所でもある、美味しそうなケーキが、最後一瞬で消え去ってしまい、やはり夢か幻だったのかと思ったところで、おとうさんとおばあちゃんの笑顔や仕草、ケーキのリボンが、夢じゃなかったかもよと物語っているような、ほんわかしたエンディングになっています。
前作「たいふうがくる」では、黒一色だけに台風が迫って来る緊迫感がひしひしと感じられ、翌朝のスカッと晴れ渡った青い空が、もの凄く気持ち良かったのを覚えています。大人受けしそうな前作から、より絵本らしくなったこの作品を読むほどに、今後目が離せなくなりそうです。また、作品が増えるごとに色の数も増えていくのか、楽しみになりました。