2004年に中国の西安で発見された墓誌。
その記載の中に、「井字真成」の文字。遣唐使時代に中国朝廷に重用され、若くして死んだ日本人についての記載があった。
歴史的発見と研究に基づいた作品ですが、いくつかの仮定の基に遣唐使時代の壮大なドラマを描いた絵本です。
創作部分が大半なはずなのに、私は埋もれていた偉大な人物として存在感に納得してしまいました。
綿花はこうして大海を渡ったのでしょうか。
遣唐使の生死をかけた歴史的な大冒険。
歴史に残る偉人の裏で、希望叶わず大海で命を失っていった多くの人たちがいることを理解しました。
日本に帰国できなくても、中国で井真成のように生涯を終えた人たちもいるのでしょう。
川上さんの文には、まなりにはせる悠久のロマンを感じます。
日本画家の鈴木靖将の絵にも絵本を越えた雅を感じます。
タイトルページに描かれた絵も西安で発見された墓碑の文を忠実に再現しているところも判ってみると圧倒されます。
児童書に留めておくのがもったいないような作品でした。