お話の中のヤギといえば、お人よしだったり、ミルクをくれたりして結構いい役回りが多いのですが、ここでのヤギは少しもいいところなんてない悪役。意見を言ってくる者には、「おいらにゃ、ガラスめだまと きんのつのがある。ひとつきすれば、いちころさ!」と大悪態をついておっぱらってしまいます。なぜヤギはここまでワルなのだろうかと疑問も残りますが、普通は悪役のクマやオオカミやキツネがおばあさんを助けようとしてくれて、その役柄の逆転が新鮮で面白いのです。そしてその強いはずの動物達を、ヤギが悪態一つで撃退してしまうところも。
最後は小さなハチに鼻を刺されてあっという間に逃げ出してしまうのも、あっけなくて意外な面白さがあります。
絵も良く見ると、動物達の対決シーンをおばあさんが遠くで見ていたり、表紙(自信満々なヤギ)と裏表紙(赤く腫れた鼻を水に映して泣いているヤギ)の対比があったりと、細かいところが楽しいです。