中島みゆきさんに「誕生」という楽曲があります。
その歌詞の一節、「生まれた時だれでも言われた筈/耳をすませて思い出して/最初に聞いた/Welcom」。
ここを聞くたびに、そうだ、みんなこんなふうにしてこの世界に迎えられたのだと胸が震えます。
そうして生まれた私たちはお母さんにだっこされて、お母さんの歌を聞きます。
この絵本は、そんなお母さんの愛に満ちています。
「アイ・ラヴ・ユー いつまでも/アイ・ラヴ・ユー どんなときも」と歌うお母さん。
子供はやがて成長し、いたずらもするようになります。おふろに入るのもいやがったり、悪い言葉も覚えます。
お母さんも時には「こんな子、動物園にも売ってしまいたい」と嘆いたりします。
けれど、子供が眠ってしまうと、やはりあの歌を歌っているのです。
お母さんの愛情はいつまでも変わりません。
最後にはお母さんは歌も歌えなくなるほど年をとります。
すっかり大人になった子供が、そんなお母さんを抱きかかえ、歌ってあげます。
お母さんが歌ってくれた歌は、次に自分の子供にも歌ってあげます。
この絵本のすばらしさは、愛がめぐって、つながっていくことです。
「Welcom」と迎えられた子供は、新しい「Welcom」で世界をつなげていきます。
そこには愛があるはずです。
時代が変わっても、伝えていかないといけないもの、そのことをこの絵本は描いています。