学校帰りにキャラメルを見つけた赤いアリのお兄さんが誘拐された。
妹は家族や近所の人などに助けを求め、みんなで兄を救出する。
1973年刊行。巻末の筆者の言葉によると、20年前の川崎セツルメントの子ども会の時、子どもたちがありを見ながら自由にありのセリフを言って遊んでいた様子を見て、アリの物語を書くことにしたという。
1950年代に生まれた物語。昭和の下町の人々の暮らしぶりが連想できるような、雰囲気がある。
小学生の兄と妹の微妙な距離感が実に生き生きと、うまくかかれていて驚く。私が小さいころ、実際にこんな風な感じで、大きい子どもと小さい子どもがなかなかハードな学校生活をしていた。
子どもが居なくなった時の、まわりの大人たちの対応も、昔に見た経験があり、それと一緒。近所中で大騒ぎになって、どこの家の人もみんなその辺を探し回ってくれていた。
(今はどうなのだろうか?)
日常生活を、アリの世界に置き換えて表現した、割と生々しい物語だと思う。物語の山場はさすがに創作ならではのダイナミックな展開になっているけど、細部にこだわりの仕事を見せてくれるのが作者らしいと思った。
改善懲悪のハッピーエンドのお話なので、安心して最後まで読めます。