たったの30ページで冬の始まりから終わりまでを描ききっています。
そこでは事件もおきません。
吹雪はありません。
「ゆうびんやさん」と「おひゃくしょうさん」
「おまわりさん」とその「おくさん」。
「こども」たちに「うさぎ」
それぞれの雪との接し方をひたすら小さく積み上げていきます。
例えば雪が降る予感を感じ取るときのそれぞれの書き分け方。
「おひゃくしょうさん」が感じる雪の降る予感は「ゆきのにおい」です。
「おくさん」はつま先の持病、「うさぎ」たちは「ふるのを しっていま」す。
そして「こども」たちは雪が降るのをひたすら待つばかり
灰色をベースにした絵なのに、肌の赤い人たちのせいか暗くはなく、
帰って静かな冬を感じさせてくれます。
この絵本をよむときは、テンポを守ってゆっくり読んでください、と
絵と中身が教えてくれている気がします。
自分が思っている2倍の速さで読むことができたら、きっとその人はプロの読み手になれる気までしてきます。
江国香織さんの訳もところどころ体言止めや行替えを多用して
絵本を読むテンポを指し示してくれます。
出版は1938年。70年以上経っても色あせない絵本です。