「この花は ふもとの 村の にんげんが、やさしいことを ひとつすると ひとつ さく」
でも、
あやの妹への優しさ
双子の兄の弟への優しさ
これは、優しさというより、辛抱です。文中でも、しんぼう、という言葉が使われています。
二人とも、優しさから譲ったというより、誰かが辛抱しなくてはいけないから、仕方なく辛抱している、というかせざるを得なかった。確かに、強要されたわけではなく、優しい方が相手を思いやって折れたんだろうけど、気持ちよく相手に譲ったわけでなく、せつなく涙ながらにですね。
あやは、ばばに会って花さき山の存在を知ったし、ある程度道理もわかる大きい子なのでまだ救われます。
が、双子の兄。可哀想過ぎます。辛抱しているのにもかかわらず、母親と弟の、兄への思いやりのなさが、読んでいるこちらは痛々しく、嫌な気持ちになります。乳児でそんな優しさが持てるのかはともかく、ほとんど同じに生まれた兄は、兄ちゃんだからと弟を思いやれ、でも、弟は兄に対して思いやりのかけらもなく、もう片方のおっぱいも奪っちゃうの?また母親には、せめて、あとからあなたにもおっぱいあげるね、ごめんねといったまなざしが欲しかった。
「八郎」や「三コ」のエピソード。こちらは命も落としています。
誰かのために、辛抱したり、命を落としたり、自己犠牲を扱った本は、扱いが難しいと思います。子どもに与えるには注意がいると思います。
辛抱にもいろいろあります。今の社会、弱い立場にいる人々が、しなくてもいい筈の辛抱をどんどんしょいこんではいないでしょうか。そんな辛抱から優しい人ほど抜け出せず、強い立場の人が、その辛さの上に、ぬくぬくと生活してはいないでしょうか。
絵は美しくて好きなんだけど…
どうしても後味の悪さを感じます。