息子が幼稚園から この本を持って帰って来たとき、一番心踊らせたのは、
母である私でした。
林明子さんの絵を本屋さんや図書館で見かけるたび、「手に取ってみたい。」
と思いながらも、その ふわふわやわらかい女の子の表紙と、泥んこと悪ふざけが大好きな ウチの男子二人が到底共感できるわけがないと 苦笑いしながら
通りすぎていたのです。
絵本を ひらいて、描写のリアルさに、息を飲みました。
この空気感、覚えてる…。
カーテンやじゅうたんの色合いや、レトロな小物。
そこには、自分が小さい女の子だった あの頃があり、懐かしい切なさで胸がいっぱいになりました。
そして、ちょっと怖いような顔して、いもうとの入院の支度をしているお母さんに、母になった自分を重ねたり、若かった母を重ねたり、色々な思いが交錯して、なかなか本を閉じられませんでした。
ウチも次男が入院し、まさに絵本のようなことがありましたが、上の子は、本当に弟のことを心配して泣いたり、絵を描いたり、親が思っている以上の絆を感じたところです。
入院したり病気したり、いつもとはちがう数日間ではあっても、時が過ぎれば 薄らいでしまうような記憶を、みずみずしいままで切り取ってくれた、そんな絵本でした。
ただし! 案の定というか、絵本は好きなウチの子どもですが、この絵本には、まったく興味を示さず 触れようともしませんでした。
「女の子が読む本」とでも 思ってるのかな?
いつか妹ができたり、娘ができたとき、自分からひらいて、何か感じでくれたらいいな、と思いました。