この世界は人間だけで出来ているわけではない。
動物もいれば昆虫もいる。魚もいるし鳥もいる。花も咲くし草だってはえている。
そうちょうど、この絵本の作者田島征三の描く絵がたくさんの色にあふれているように。
もし、たった一色の世界だったらどんなにつまらないだろう。
だったら、この世界のたくさんのことを知るといい。
この絵本のバッタのように、毎日何かにびくびくすることをやめて、新しい世界に飛び出すことに決める。
田島の絵はとても力強い。
だから、小さなバッタが蛇やカマキリや鳥やカエルと戦ってどんどん空の高みに昇っていくのを見ていると、痛快だ。
それに、こんなことを考えてしまう。
バッタだってとんだんだ。自分もとべるんじゃないか。
きっとこの絵本で、そんな勇気をもらった人はたくさんいるにちがいない。
それにバッタは自分に羽根があることに気づく。
それをパタパタと動かすと、空を飛べる。トンボもチョウもバッタの飛び方を馬鹿にして笑うが、バッタは自分の新しい力を自分で見つけたのだから、すごいものだ。
誰しもが持っているだろう、自分だけの力。このバッタのようにそれに気がつくかどうか、それは自分の問題だ。
誰も教えてくれない。
そして、その力がどんなに弱々しくはあっても、その力を信じること。
実はこの絵本のバッタだって、最後にはとっても素晴らしいことが待っているのだ。