安野光雅さんの絵本は、どれも奥が深いですね。
絵もとても素敵で、中世の欧州らしさがぷんぷん香っています。
この本は、「天動説」の絵本です。
中世、人々が考えていた世界観。
星も太陽も天球にあるモノはすべて地球の周りを回っている。
天を動かしているのは神様。
病気や災害など人々に災厄をもたらすのはすべて悪魔、魔法使いの仕業。
・・・このような時代のこと。
現代人は、これらの考え方が非科学的で迷信だ、ということはみんな常識として知っています。
コペルニクスもガリレオも、地動説を唱えた人々は当時の権力者から迫害されたことも。
でも、この本を読むと、当時の人々にとって地動説がどれだけショッキングな話であったか、自分の足元が揺らぐ思いだったことかが、理解できます。
そんななかで、いろんな証拠が少しずつ明らかになってきたことで(例えばフーコーの振り子)、徐々に地動説が本当であることが人々にも理解されるようになってくるんですね。
あとがきに記された安野さんの言葉。
「今日の私たちが、私たちにとっての真理を手に入れるために、天動説の時代はどうしても必要だったのです」
ものすごく納得できました。
ページをめくるたびに変わっていく地面の姿、これは人々が天動説から地動説へと真理を手に入れる過程を表しているのでしょうね。
とても深い内容の絵本です。
地球、宇宙について一通り学校で習った後にこの本を読むと、より深く理解できるのではないでしょうか。
大人の方にもお勧めです。