「わらしべ長者」というと、もっていたわらしべを交換することで貧乏人が長者になって行く様を描いた、どちらかといえばほんのりぬくもりがある民話のように思っていたのですが、このお話はちょっと違います。
沖縄がよその国に侵略されて、たろうのお父さんは殺されました。
たろうは沖縄を離れて小さな島に逃げてきたのです。
その太郎が重い病に伏せた母から受け取ったわらしべ一つ。
そのわらしべが、太郎を王子にするというお話です。
沖縄にもどり、侵略者を追い出します。
機知にとんだ方法と、島民を奮い立たせる信望。
「わらしべ長者」の沖縄版はとても熱く、骨太です。
その侵略者とは誰だろう。
民話ですから、歴史事実は遠い昔のことかも知れませんが、儀間さんが描くととても含みが多く感じられます。
日本で唯一の戦場だった場所。
日本人(やまとんちゅう)にも裏切られてきた場所。
嘗ての琉球王国は、沖縄独特の世界の中にいるような気がします。
「わらしべ王子」そのものは爽快なお話として、子どもウケするような気がしましたが、この絵本はそれだけに終わっていません。
物語の後に重厚な解説があります。
この話をモチーフにした児童画があります。
木村次郎さん作詞、丸山亜季さん作曲の歌が5曲、歌詞と譜面がおさめられています。
残念ながら、譜面から曲をイメージ出来なかったのですが、この絵本に込められた思いの濃さを充分に感じます。
読む人によって感想はいろいろだと思いますが、お薦めします。