なんとも贅沢な絵本です。
贅沢というのは、この絵本を作った人のことを指しています。
まず、文を書いた人。
今年(2022年)1月に亡くなった児童文学者で文化功労者でもあった松岡享子さんが、まるで昔話を再録したかのようなお話に仕上げています。
次に、絵を描いた人。
女流日本画に与えられる上村松園賞を受賞した画家で、晩年には文化勲章も受章されている、秋野不矩(ふく)さんが絵を担当しています。
絵本というのは絵が与える要素も大きいですから、やはりしっかりした画家が描いた作品は、絵を見ているだけでも落ち着きます。
物語は「むかし、あるところに」から始まります。
心の優しい老夫婦が育てていたかぼちゃ畑に、ひときわ大きなかぼちゃができました。
そのかぼちゃからなんと「ぴいひゃら どんどん」と祭りばやしが聞こえてくるではありませんか。
驚いた老夫婦がそっとかぼちゃの中をのぞいてみると、親指ほどの大きさの男女があつまって踊っています。
その祭りばやしに老夫婦も楽しくなってきます。
ところが、ある時から祭りばやしが聞こえなくなります。
心配した老夫婦がのぞいてみると、彼らのたいこの皮が破れてしまっています。
優しい老夫婦は、手作りで小さなたいこをこしらえてあげることにしました。
なんだかこんな昔話を小さい頃に聞いたようなそんな懐かしさは、物語に登場するおじいさんおばあさんの優しさが醸し出しているのでしょう。