「なつ」といえば、この絵本です。
白いシャツに麦わら帽子と捕虫網。青い海と空をバックに、真っ黒な影を落として走る少年の姿を描いた表紙にひきこまれます。
家を出る少年。少年は一人。一人でなければいけません。
大きな白い雲がうかぶ海などには目も向けず、防波堤の上を走り、田んぼのなかを走りぬけ、渓流の巨大な石を跳び越えて、やっとクワガタの木にたどり着きます。
子どもたちは、知っているのです。どの木に虫がいるのかを。でもそれは秘密なのです。だから一人で誰よりも早く行かなければならないのです。
少年にも少年の木がありました。
少しぐらい危なくても、高いところにいるクワガタを採るためなら、木に登り、何度落ちても、あきらめることなく挑み続けます。
そうやって一日が終わるのです。
こんな日々を通じて、子どもたちは成長していきます。大人は、子どもたちの成長を促す環境づくりを間接的にサポートしてやらなければなりません。でも決して間違えてはいけません。デパートやスーパーで売っているクワガタを買っても、イチゴ狩りのように、閉ざされた場所に放されているクワガタを採ったとしても、それはその子のクワガタではありません。親としての役割を果たすのも大変になってきました。