長谷川集平って不思議な作家だ。
決して好きじゃない絵だし、内容もわけが分からない上にどことなく陰がさしているし、あまり読んでハッピーな気分になることもない。
なのに、気がつくと手にとっている。
この本も、本のサイズ、色、そしてあの独特な絵に魅かれて、手にとった。
平凡というより、どちらかというとちょっと情けない感じの親子の日常を、決して情をからめることなく、淡々と描いている。
日常生活の1コマ1コマをカット割にして読者に提示し、「さあ、後は各自でどうとでもご判断ください」と言われているような作品だった。
一読してよくわからなかった。
子どもに読み聞かせてみたら、本を開いただけで、甘い匂いに惹かれるアリのように寄ってきた。
楽しんでいる様子ではないし、読み終わって感想もないけれど、それでも最後まで飽きることなく聞いていた。
長谷川集平の本、というだけで強烈な吸引力があるらしい。
何を言いたいのか、伝えたかったのか、結局よくわからなかったが、昭和時代のどことなく枯れた感じの生活の匂いを嗅ぎ取ることは出来たように思う。