セミは7年間土の中で過ごし、地上に出てきてからは1週間しか生きられないと理科の授業で習ったときの衝撃を、今でも覚えています。
はかない生涯を知り、うるさいほどに鳴くセミの声が、子供心に切なく感じられました。
でもこの絵本を読んで、地上で生きられる時間が短いからといって、それをかわいそうだと思うのは、人間の勝手な考え方なのかもしれないとハッとしました。
だってこの絵本の中で描かれているセミくんの地下のおうち、とっても居心地がよさそうなんですもの。
「今までありがとう」とお礼を言って地上へと上がるセミくん。きっと土の中での生活を楽しんでいたんだろうな、と何だか温かい気持ちになりました。
そしてたくさんの仲間たちに祝福されて空を飛ぶセミくん。
「生きてるってうれしいな」という一言に思わずジーン。
工藤さんの芸が細かい絵も見ごたえがあり、虫が好きな子はもちろん、そうでない子も、きっと楽しめると思います。