今日ほど、「悲しい本」が身近に感じられる時はないのではないでしょうか。
コロナウイルス禍で気分は落ち込み、いつ起こるともしれない災害や、近づきつつあるように思えるミサイルに怯え、彼の地で起こった戦争で、ゲームのように殺戮される人の姿を目にしていると、たまらなくなります。
でも、自分が自分でいられるのは、やっぱり家族がいるからでしょう。
この絵本で、悲しみのどん底にいる男は、最愛の息子を失った喪失感の真ん中にいます。自分を愛してくれた母親も、もういません。
他に家族の姿の見えない孤独感が、男の置かれている立場を表しているように思えます。
幸せのふりをする演技は辛すぎます。
この男の炎のような悲しみを、客観的に見られる自分は幸せかも知れません。
でも、いつ訪れるかも知れない事実に、備える気持ちの大切さを感じます。