題名から「悲しい」って言っちゃてますね。
「この本を読むと悲しくなる」と言う意味ではなく、「悲しみについての本」です。
「悲しい」という感情について考えることってないし、ましてここまで深く向き合う本は、なかなかないと思います。
これは悲しみと生きた男の本です。
「私の悲しみだから。ほかの誰のものでもないのだから。」
という文があります。
この感情は自分自身のものだから、ほかの誰にも分からない。
だから独りで考える。戦うんだ。
でもぬくもりや温かさが欲しくなるときもある。
人が明り(この本ではロウソクですね)を点けるのは、悲しみを和らげるものを求めているからかもしれませんね。
悲しいという感情は、とても人間らしく、自分が生きていると思える大切なものだと思います。
それはとても苦しく、痛くて痛くてたまらないものですが・・・
でも悲しみを知らなきゃ、喜びだって感じることは出来ません。
悲しみを知っている人間は、人に優しくすることができる人です。
月並みな言い方ですが、そんなことを考えさせられた作品でした。
哲学的で、難しい絵本です。
大人向けの絵本と言い切ってもいいと思います。
訳は谷川俊太郎さんで、流れるような言葉を書かれていますが、この本では強烈な言葉を投げかけているような気がします。
その分、心に響く名訳でした。