石のスープと言えば、マーシャ・ブラウンの「せかいいちおいしいスープ」や、「オオカミと石のスープ」が思い浮かびます。
実は、石のスープというのは、ポルトガルに伝わる民話だそう。
似た民話はヨーロッパ各地にあり、北ヨーロッパでは石の代わりに釘、東ヨーロッパでは斧が使われているようです。
舞台は中国。
3人の僧侶が、ある村にやってくるシーンから始まります。
良く働くものの、それは自分の為だけにという意識が、村人達に共通していたのです。
村に入っても、誰一人、家から出ないで居留守。
僧侶は、「この村の人たちは、幸せを知らぬ。」
「だが、きょうはな、村人に石からスープをつくることを教えてやらねばならぬ。」
と言って、火を起こし、井戸水が入った鍋に三つの石を入れたのです。
それから、次から次へと、「〇〇があれば、もっと美味しくなるのに」と言った言葉に、見物に来た村人達が反応して、どんどん食材が鍋に入れられていくのです。
大きな鍋を、村人達が覗き込む一枚が秀逸。
誰かが、心を開いて、人のためになることをすると、別の人が、もっと良いことをするので、スープはどんどん美味しくなっていくのです。
最後は、皆で晩餐会を催すのですが、皆の心が解き放たれて、分ち合って協力することの大切さを知るのです。
この絵本を読んでの一番の驚きは、作者のジョン・J・ミュースが、生粋のアメリカ人であること。
名前が伏せられていれば、誰しもが、中国の絵本と思うに違いないと思えるほど、特徴を上手く掴んだ絵だと思います。
何より良いのが、人の表情の捉え方。
まるで、そこに居るかのような描写は、一見の価値あるものだと思います。
小学生低学年あたりのお子さんが、自分で読む類の作品で、心の琴線に触れる作品としてオススメします。