最初のページは絵手紙のような雰囲気です。「あるところに、パンやのくまさんが、すんでいました。くまさんは、パンをうるみせと、くるまを1だいもっていました...」とセンテンスごとにちいさなさし絵が添えられて続くのですが、もうストーリーの大半はこの1ページでかかれているといってもいいような、本当にシンプルなお話です。
このお話を最初に読んで感じた懐かしさは、子供のころ好きでよく読んでいたパディントンシリーズに、言葉の選び方が似ていたからかもしれません。「とくべつのタルト/とくべつのかん」「ほんしきのあさごはん」「あさいちばんのおちゃ」といったような、思い入れが伝わってくるような言葉たちが、私はとても好きです。
リズムのいい擬音がくりかえされるところも効果的です。「パンのきじをどさっ どさっ どさっ!とこねます」と書いたあと、「どさっ どさっ どさっ!」とくりかえすことで、『あぁ、実際にいまやってるんだな』と感じることができます。絵は動きはしませんが、読んでいるほうにも、聞いているほうにも、想像する楽しさが広がります。この効果は車でパンを売りにいき、かねをがらん がらん がらん!と鳴らすという場面や、お金を数える場面でも同じように働いてくれています。
しずかにくりかえされるくまさんの毎日。でも、それは決してつまらないさえない毎日ではなく、くまさんが自分の1日に対して出来る限りの礼儀を払って積み重ねられたものなんだなと思います。