さらりと読んでしまうと、なんだかポイントをつかめない深みをもった絵本です。
イワンは、父親と同じ名前をもらい育っていきます。
でも、戦争で家族を失い、故郷を失い、孤児として、大きな施設に入れられて他の子どもたちと一緒に育つことになりました。
その中で、才能を認められて、運にも恵まれて、王様にまでなる、サクセス・ストーリーのようです。
でも、イワンは自分の意思を持つことも、意見を言うこともできない、傀儡君主でした。
どうして、自分の意思を失っていったのでしょう。
それが教育だったら怖いお話です。
言われるままに、何も語らない女性をお后にしたことも意味深長です。
意見を言えない王様と口をきかないお后様は、結局似たもの夫婦だったのでしょうか。
この絵本で、王様のイワンが唯一意思を見せたのは、自分の息子に名前を付けただけのような気がします。
しかも自分と同じ名前を付けた思いはどうだったのでしょうか。
こうしてイワンの名前は、3代に渡って継承されていきます。
イワンの生き方を肯定できる人はいないでしょうね。
自分の意思の大切さ、意思表示の大切さを改めて感じました。