この絵本の作者、エズラ・ジャック・キーツのことを末盛千枝子さんは「小さな子ども達の喜びと悲しみを知る人だった」と、『小さな幸せをひとつひとつ数える』という本の中に記しています。
そんなキーツは1916年にニューヨークの下町で生まれ、独学で絵の勉強をしたそうです。
1983年に67歳で亡くなりましたが、今でもアメリカの絵本界では大きな存在だと末盛さんはいいます。
キーツの絵本には「ピーター」という名前のついた作品がたくさんあります。
中でも、この『ピーターのいす』は代表作のひとつで、1967年の作品ですが、今も人気の一冊です。
ピーターというのは黒人の男の子の名前です。
この作品ではピーターにかわいい妹が誕生しています。おかげで、お母さんは妹の世話にかかりっきり。しかも、ピーターが小さい頃に使っていたベビーベッドも食堂イスも今ではピンクに塗られて妹のものに。
ピーターは断然面白くありません。
そこで、愛犬のウィリーとまだピンクに塗られていない小さなイスを持って、家出することにしました。
でも、家出といっても家の外に立っただけ。
しかも、お母さんに「帰っておいで」といわれて、すんなり帰ってしまうところがかわいい。
もっとも、ちょっといたずらをしかけたりしますが。
そうして、ピーターは自分がもうおとなのイスに座れることにも気づくのです。
子どもの成長を見ていると、この絵本のピーターのように弟や妹が生まれた時に少し変化がみられることがあります。
キーツはそのあたりのことをとてもよく観察していると思います。
小さな子どもの視点に立っているから、キーツの絵本は今でも読まれているのでしょう。