【内容】
夜中に友達が、幽霊の町に行こうと誘いに来た。僕は、パジャマのまま友達と一緒に出掛け、丘の向こうに広がる幽霊の町に行った。二人は幽霊の町の住人に見つかり、追いかけられる。逃げ遅れた僕は、幽霊につかまり、幽霊たちと一緒にこの町で暮らす事になったが…
ダイナミックでスピード感あふれる絵で、ぐんぐん異空間に引き込まれる怪談絵本。
【感想】
この世と異空間との境目が極めてあいまい。ちょっとしたきっかけですぐに「あちらの世界」に入り込み、しかも出られない。子ども向けのファンタジーだから、最後は現実世界に戻れるのだろうと思って読んでいたが、全く戻ってこなかった。異空間でそのまま年をとって、元の世界からどんどん離れて行ってしまう。
これは、普通に起こる事だと思って、怖くなった。
例えば、子どもの頃に一緒に遊んだ友達が、いつの間にか変な道を歩んでいて、いわゆる「普通の生活」には戻ってこられなくなっている。自分もそうだが、社会的にドロップアウトしたり、精神を病んでしまったり、妙なグループに参加してどっぷりその世界にはまり込んだり…生きているといろんな「異空間」が存在して、ちょっとしたきっかけで「あちらの世界」にはまってしまう。戻ってこられる場合もあれば、そうでない場合もある。本人がそれで幸せならいいのだが、傍から見ているとあまり良くないように見える場合も多々ある。
キッカケは、この絵本にあるように、ちょっとしたこと。特別な手続きや、大変な経験は必要ない。この絵本みたいに、夜中に妙な場所に遊びに行こうという友達がいたりして。だいたい、そんな変な友達と付き合っているとろくなことがない。付き合う人は慎重に選んだ方が無難だ。案外、「友達」と見せかけて、実は異界の住人が連れ去りに来ているのかもしれない。
人生が大きく狂っていく様子が想像できて、怖い絵本だ。どちらかというと大人向けの恐怖、かな。