この絵本、主人公はニューヨーク世界貿易センターの二つのタワーを綱で渡ったフィリップですが、ビルそのものが主役であるような気がします。
9.11の事件がなければ、この絵本は生まれなかったかもしれないし、これほどの感銘を与えないかもしれないのです。
ビルは、ジェット機が突っ込むというあの悪夢で崩壊しました。
それがなければ、ビルはアメリカの象徴であり夢であったはずです。
そして、そのタワーの間を綱渡りすることが大道芸人フィリップの夢でした。
絵本は、詳細に描いていますが、つた渡りしている後継は、回りの人の反応とは反対にフィリップの夢の実現。風も景色も夢のような思いでした。
そして今、ビルの姿はなく、ビルも綱渡りも過去の夢。フィリップのすごさとともに、ビルがそびえていた時の平和を思い起こします。
それにしても、とてもスケールの大きな綱渡り。見ていると吸い込まれそうな緊張感。
フィリップの解放感と、行動力が伝わってきます。
あのような事件は二度と起こってほしくありませんが、9月11日が来るたびに、あの事件とともに思い出されるのでしょう。