『羅生門』と言えば、芥川龍之介の『羅生門』が有名ですよね。でもあの『羅生門』は私には怖くて、読後感も悪かったような印象があります。
日野多香子さんのこの『羅生門』は図書館で表紙に惹かれ、読んでみましたがじーんときました。読みごたえがあり、いい本に出会えたと本当に思い、さっそく購入しました。
人は環境によって、どんどん変わっていく。それは良くも悪くも。そして根っからの悪人はいない。出会う人によっても人は変わることができる。そんなことを教えてくれたように思います。
やむを得ず別れなくてはならなかった母とゆきまろ。幼いゆきまろが出会ったのは盗賊の親分。盗賊の仲間に入り、悪いこととは知りながらも盗みをしなければ生きていけなかったのです。自分の面倒をみてくれた盗賊たちにもそれぞれ悲しい過去があったようです。その盗賊たちが捕らわれ、処刑されたのちは、もう悪いこととは思わなくなってひとり盗みを続けます。人としての心も母の形見も手放した時、ゆきまろは鬼に。
そんなゆきまろの次の出会いで、ゆきまろは人としての心を取り戻し、母の形見も手に戻し、成長していきます。老人の優しさ、にぎりめし、手が鬼を人に戻せるのですね。そのたくましく生きる姿を偶然に目にした母はさぞかし感謝し、安心したことでしょう。声をかけなかったことがそれをすごく物語っていたように思います。
読後感がよく、本当に皆に勧めたい本に出会えました。5年生に読みました。