初版から第4版まではハクストハウゼン家からの話が「緑の上着の悪魔」の題で、1670年グリンメルスハウゼンによって第5版で「最初の熊の皮を着た男」に改題された作品です。
ホフマンさんの絵で久々に読み直してみると、子どものための昔話というよりは、大人もたっぷり楽しめるお話です。
戦争が終わり、暇を出された鉄砲一丁の兵隊が、お金も土地も財産もなく世の中に放り出され、行く当てもなく思いあぐねている時に近づいて来たのが、緑色の上着を着た男(悪魔)。
この男に持ちかけられたとんでもない話。
七年間、あてがわれた緑色の上着を着て、体を洗うことも髪・髭・爪を切ることもしてはならない。
上着のポケットに手を突っ込みさえすれば、いつでも金をひとつかみずつとれる。
ただし、自ら主の祈りを唱えてはならない。
勇気だめしに撃ち取った熊の皮をマントを寝床にし、「くまっ皮」と名乗れ、そして七年この姿でいたら、自由の身にし金持ちにしてやるという、約束に応じる兵隊。
お金に困らないのは良いのですが、兵隊の姿は二年を過ぎるとみるも恐ろしい化け物のようになって、・・・・・・。
四年目にある宿屋で、裏の棟の一部屋に泊めてもらうことになった兵隊が出会った老人を助けてやり、お礼に末娘と婚約を交わすことに。
外見でひとを判断しなかった末娘との、指輪を二つに割り約束するシーンが心に残ります。
この後のくまっ皮の世の中をあちらこちらと巡り歩き善行を積み、自分の代わりにお祈りをしてもらう姿に、感心します。
貫き通したくまっ皮の意思の強さと、心優しさ。
並の人間にはできる事ではありません。
葡萄酒のコップに投げ込まれた半分の指輪を、末娘が飲み干して見つけるシーンは、大人もドキドキを感じると思います。