『人魚姫』でコンピュータグラフィックを使った石倉欣二さんにしては、対極にあるような荒々しくて男性的な肉太の絵が印象的。
舞台の佐渡の冬の海の荒々しさを象徴するような絵に圧倒されます。
この物語で、佐渡が肉牛の産地であることを初めて知りました。
物語は、貧しい家に飼われている母牛が売られていくお話。
父母を失って残された孫たちとおじいさん。
おじいさんは島の掟を破っても雌牛を売りに出すことにしました。
船に乗せられて越後に渡る牛たち。
越後は寺泊の浜近くで、海に投げ出された牛たちが海を泳ぐ姿の力強さで買い手が値をつけます。
他の牛たちとは逆方向の佐渡を目指して泳ぐ雌牛の母性の悲壮感と海の荒々しさ。
絵は息苦しいほどに圧巻です。
雌牛の幻影でしょうか?
おじいさんは雌牛の鳴き声を聞いたような気がしました。
子牛は乳を吸っているような音を立てます。
子牛はたくましく育っておじいさんたちを助けるのですが、文末の「めでたしめでたし」にはちょっと違和感を覚えました。
悲しお話ではないですか。
地方性が強すぎるからでしょうか。
手に入りにくいのが残念です。
地域に根付いた伝承は、とても大切だと思います。