このシリーズにはめずらしく、
母が子を思う気持ちが中心に描かれていて、
同じ立場に立ちやすいということで、
つい、すぐに感情移入してしまう一冊です。
わが子ではないと知りつつ、
そして卵がかえって、それがこわいティラノザウルスだとわかっても、
手放すことはできなかった母心。
わけ隔てなく育ててくれた母の思いを汲み取るかのような、
引きちぎられるような気持ちを振り切っての別れ。
別れずにうまくやっていく方法はなかったのかと
母としては思い至ってしまいます。
優しい心の種をまかれたティラノザウルスが
同じ種の仲間達の元に戻った後、
そこで、もっと大きな種まきがなされたことを祈ります。
そして、別れた母も、ティラノザウルスも
それぞれの未来が、明るいものだと信じたいです。