デビーの夢は、いつかおじいちゃんみたいな世界一の調律師になること。でも、孫娘にはピアニストになって欲しいというおじいちゃんの心は、複雑(デビーが可愛くて仕方のないおじいちゃんは、もっと良い仕事に就いて欲しいと願っているのです)。そんなおじいちゃんに、友人のピアニストが言いました。
「人生で自分の好きなことを仕事にする以上に幸せなことがあるかい?」
この言葉、似たような言葉を、何度か聞いたことがあるけど、この絵本ほど、響いたものはない。これは本当に、素晴らしい絵本。大切に大切につくられた絵本。カバーをとると、落ち着いた緋色、素敵な手触り、銀色の調律道具。細部まで丁寧に作り込まれたんだなと感じる。
世界一の調律師と、その孫娘デビーと、おじいちゃんの友人の名ピアニスト。紡がれる言葉と、日常と、デビーの「おじいちゃんみたいな調律師になりたい」という夢。ゴフスタインのシンプルで幸福な絵(演奏会の観客席、おじいちゃんにぴったりと寄り添って座っているデビーがとっても可愛い)。それらすべてが織りなす、唯一無二の物語。あまりにもひたむきなデビーの心に、思わず涙してしまった。
一生大切にしたい絵本と出会えた!