かこさとしさんが『からすのパンやさん』を出版したのが、1973年。
それから40年後の2013年に、からすのパンやさんの4羽の子どもたちの活躍を描いた4冊の絵本をかこさんは出版します。
そこには2011年に起こった東日本大震災の影響も多分にあったと思います。
特に、三番めの子どもレモンちゃんのその後を描いたこの絵本は、それが顕著に感じられます。
何しろ、この絵本は火事のシーンから始まるのですから。
いずみがもりのかえでどおりにある「てんぷらやさん」が火事になります。
店は燃え、息子のイワくんは目を怪我しているし、おかみさんも行方がわかりません。
絵本にしてはとっても暗い始まりです。
そこにパンやの娘レモンちゃんとオモチくんがやってきて、てんぷらやの再建にひと肌脱ぐことになります。
先生は「てんぷらやさん」のご主人キュウベエさん。
レモンちゃんたちはキュウベエさんからてんぷらあげの秘伝の伝授をうけます。
水と油の関係など、さすが理系のかこさんならではの説明で、子ども向けの絵本ながらちっとも手を抜くことはありません。
この作品ではほかの「からすの」シリーズとちがって、さまざまなてんぷらが登場するわけではありません。
そのかわり、てんぷらやフライの揚げ方がとても丁寧に描かれています。
最後に行方がわからなかったおかみさんも戻ってくるし、レモンちゃんは「てんぷらやさん」のイワくんと結婚までしてしまいます。
それになんといってもこの絵本では、楽しい「てんぷらフライのうた」もはいっているのです。