中学生の娘はこの物語が実話であると知ってショックを受けていました。
「アンネの日記」がいくら有名でも、まだまだ子供たちには、ナチス軍によるユダヤ人大量虐殺の事は浸透していない事を感じました。
収容所に強制連行されるぎゅうぎゅう詰めの列車の窓から、お母さんから生きる望みを賭けて放り出され、奇跡的に救われた女性のお話です。
<お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。>
訳者の蜩c邦男さんは、この文章に出会った時、翻訳させてほしいとおっしゃたそうです。
写実的に描かれたモノトーンの挿絵の中のドイツ兵士の後姿はとても人間には見えません。
人間の姿をした悪魔だったでしょう。
列車脇に残された乳母車がとても物悲しい。
あの時代、一つの命を守れることが奇跡だった。
こんな悲惨な歴史があった事を、きちんと後世に残さなければいけない。
そして、今の時代、あまりに軽んじられている命をもう一度見つめなおさなければいけない。