放送作家で作詞家でタレントの、永六輔さんの訃報が届いた時、多くの人がその人柄をしのび、惜しい人を亡くしたと涙をこぼしました。
そんな時、見つけたのが、この『いのちの木』という絵本でした。
作者のブリッタ・テッケントラップさんはドイツの絵本作家ですし、この絵本が日本で出版されたのは2013年ですから、永六輔さんの死とは何も関係ありませn。
それでも、この絵本に描かれているのは永六輔さんのことではないかと思いました。
それはこんな話です。
雪の降るある日、年老いた一匹のキツネが森の中で死んでしまいます。
キツネの死を知って、森の仲間たちが集まってきます。そして、キツネとの思い出をそれぞれが語るのです。
フクロウは若い頃に落ち葉を拾う競争をしたことを、クマはコグマの世話をしてもらったことを、ウサギはオニごっこをしたことを、 たくさんの森の動物たちがそれはそれは楽しそうにキツネとの思い出を話しました。
キツネが亡くなっていたところから小さなオレンジ色の芽が出てきました。そして、それは次第に大きくなって、森一番のりっぱな木に育ちました。
森の動物たちはその大きな木に集まりました。いつまでも動物たちの心にはキツネが生き続けているのです。
永六輔さんのことを思うと、この絵本のキツネのように思えて仕方がありません。
きっとこれからも私たちは永六輔さんが作った歌を歌うでしょうし、永さんが感じたことや怒っていたことを自身のこととして振り返ることがあるでしょう。
永六輔さんという木は、多くの人の心の森にりっぱに育っているような気がします。