このシリーズ、我が家では、「くんちゃんとふゆのパーティー」を先に読んだのですが、娘には、「だいりょこう」のお話のほうがおもしろかったようです。どちらのお話もそうですが、たとえ冬ごもりを少々先に延ばしたとしても、まずは子どもの気持ちを何よりも大切にし、子どものしたいようにやらせてあげる、という両親の大らかさ、温かさが本当に素晴らしいと思いました。もっとも両親は最初から、くんちゃんのことを誰よりもよくわかっていて、信じてあげているからこそ、「大旅行」も「パーティー」も、実際の時間にしてみれば、取るに足らないほどのもので、一々目くじら立てて、頭ごなしに反対することでもない、ということも心得ているのでしょうね。私も、もっと心にゆとりをもって、子どもの声にも耳を傾けてあげたいな、と思いました。
この本を読むと、本当に、子どもは、子どものリズムで、子ども独自の世界で生きているんだなあ、ということを実感します。それを私たち大人は時に忘れてしまって、大人の都合で、大人のリズムに、子どもを合わせようとしてしまう・・・それでは、くんちゃんのように、子どもらしい子どもは育たないんですね、きっと。距離的には、丘の上の松の木まで行ったりきたりしただけのことでしたが、くんちゃんの心は、鳥たちといっしょに遠く南の国へと羽ばたき、大旅行をしたのと同じ喜びを得たことでしょう。
娘は、くんちゃんがお母さんにさようならのキスをしに戻ってきたとき、「お父さんにもキスは?」と、そのことが1番気になったようで(!)、くんちゃんがほかにも忘れ物をして毎回戻ってくるたびに、同じことを聞いていましたが、同時に、「鳥のことは?くんちゃん、思い出さないのかなあ?鳥はもう、湖を渡って、向こうの丘を越えて行っちゃったよ」と、心配もしていました。