あまり絵本には興味のない主人が、初めて自ら手に取り読んだ絵本。そして私がはじめて絵本を読んで、感銘を受けた絵本です。絵本って子どものためのものだと思っていたのですが、大人にこそ読んでもらいたい、そういう絵本もあるのですね。
このとらねこは、野良猫になって初めて、飼われていた時には味わうことができなかった、愛するということを学びます。自分をまず愛し、そして誰かを愛するということを学ぶのです。どんなに立派な王様に飼われていても、船乗りで世界中を旅しても、味わうことが出来なかった思い。それが愛するということ。
自分が死ぬということで、涙を流してもらうことはあっても、自分が泣くということを知らなかったとらねこも、白いねこの死によって、初めて悲しみということを体験します。とらねこが白いねこを抱きかかえ、「おんおん」と天を向いて泣いているさまに、私は、本当にグッと心をつかまれてしまったのです。「ねこはもう、けっして生きかえりませんでした。」という文章ととらねこのいた場所に咲いている花の絵。この余韻がまた想像力を膨らませてくれる。まだ娘には理解できないかもしれない。でもきっといつか、このとらねこの100万年の一生について、語り合ってみたいな。