「ゆるやかに崩壊していった家庭を営みながら」と後年エッセイで綴った佐野洋子さんは、自身の代名詞ともなったこの絵本をわずか15分で書き上げたという。
そうして出来上がった絵本は1977年に刊行、その3年後の80年に最初の夫と離婚することになる。
そして、この絵本はロングセラーとなり、刊行から半世紀近く経った今も読み継がれている。
佐野さんはどうしてこの作品を書いたのでしょうか。
100万回も生き死にを繰り返したねこが最後には「けっして」生き返らなくなる。それは、愛する妻を失ったからです。
佐野さんにとって、壊れていく家庭はまだ生き返ることのあるものだった、ここでは死ねないという思いだったのかもしれません。
この絵本が多くの人に愛されているのは、多くの人にとって、今はまだ100万回の生き死にの途中だからです。
まだ本当に愛するものに出会っていない、そんな思いと、もしかしたら亡くなった人もこのねこと同じように生き死にを繰り返して自分のところにやってくるのではないかという、そんな思い。
だからこそ、この本は何度読んでもいろんな表情をして読者を受け入れてくれるような気がします。
そして、佐野洋子という絵本作家もまたこの絵本を通じて生き続けるのです。